千葉県の工場の用地について
2020/06/08
皆様、こんにちは。
職人バッカの千葉でございます。
本日は、工場の新築や増築の企画段階で、課題になる用地について、考えてみたいと思います。
目録
- 高速道路や国道に近く、工場用地の前面道路の幅員が、8m以上確保されている、用地があまりない。
- 工業地域系は沿岸部に多い。
- 軟弱地盤や切土盛土の造成地が多いので、地盤改良が必要な場合が多い
- 急傾斜地の隣接地は、崖条例がかかる
- 開発許可や開発指導要綱が大半かかる
- 市街化調整区域の元工場は比較的に、安価である
都市計画図というものがあります。
いわゆる、建物の用途によって、建てて良い場所、悪い場所を地域別に定めた地図です。
用途地域には大別しますと、住居系、商業系、工業系があります。
工業地域系には、準工業、工業、工業専用地域とあります。
工場の場合、建てていいかどうかの判断は、被災時に周辺環境に重大な汚染や破壊を及ぼか否かで、分類分けされています。
準工業地域の場合は、比較的に周辺に及ぼす汚染や破壊の恐れの軽い用途が定められています。
一方、特別工業専用地域では、重大な被害汚染の恐れのある用途が定められています。
この都市計画図は、工業系の場合、青系や紫系の色が用いられています。
住居系は緑色系、商業系は赤色系です。
当然、住居系と工業系はなるべく隣接しない様に計画がされています。
こうして見てみますと、工業用地が沿岸部に集中している事がわかります。
1、高速道路や国道に近く、工場用地の前面道路が8m以上確保されている用地があまりない。
工場の場合、大型の輸送車が部材、部品の搬入出をします。
このため、前面道路は最低でも8m以上必要であり、高速道路や国道の様なメイン経路にたどり着くまで、
8m以上の幅員が保たれている必要があります。
この工業団地から高速や国道に至るまでの細道も、常に道路幅が8m以上必要となりますと、本当に郊外に設けられた工業団地に限定されることが多くなります。
2、工業地域系は沿岸部に多い。
千葉県の場合、工業地域系は東京湾に面してあります。
これは、おそらく、日本の歴史的にみて、産業として、農業が先行しており、内地の用地は田畑に使われてきた事と区画整理上、大きな道路や用地を確保しづらかった事に由来すると思われます。
その他の候補地で言えば、先にも触れましたが、郊外型の工業団地があります。
郊外型工業団地は、行政主体や大手デベロッパー主体の大規模な開発と計画で定められたこともあり、比較的広大な用地にも恵まれた事に由来すると思われます。
残念なのが、工業団地内の道路の交通事情はいいにしても、高速や国道に至るまでの道路は、部材を搬入出する業者とすれば、状況はけっしていいものでもないようです。
前面道路や国道のアクセスポイントなど年中の渋滞や切り返し時の神経をすり減らす事、曲がり角など大変苦慮されるようです。
3、軟弱地盤や切土盛土の造成地が多いので、地盤改良が必要な場合が多い。
沿岸部の工業地域系の用地は当然埋め立て地が大半で、軟弱地盤が大半です。
このため、地盤改良がほぼ、必要となります。
内地の工業団地内ではどうでしょうか。
広大な敷地で、割と平滑な地面があっても、開発時に切土盛土によって
その平滑地面が成立している事が多々存在します。
切土は硬い地面の場合が多いのですが、盛土は軟弱です。
硬い地盤と軟弱地盤が入り混じった用地ですので、結局地盤改良が必要となる事もよくある話です。
4、急傾斜地の隣接地は崖条例がかかる。
さて、内地の比較的地盤強度のある用地であったとします。
しかし、千葉県で定めている条例で崖条例というものがあります。
崖とは、30度以上の傾斜地で2m以上あるものです。
崖の隣接地は、高い土地でも低い土地でもその条例の対象地となります。
千葉市緑区大野台で実際に設計した工場ですが、そこは崖地の最高部にある平滑な土地でした。
しかし、隣接地は険しい傾斜があり、傾斜の底部分から計測して30度以内に建物を建てないか又は、
抵触した範囲の基礎下に柱状改良をするかの選択でした。
結局、工場の利用勝手を最大限利用したい事もあり、抵触した部分の基礎下に柱状改良を施す事となりました。
5、開発許可や開発指導要綱はかかる。
開発許可は、その工場の用地の面積で3000㎡以上ある場合ですと、必要となります。
「許可」といういうだけあって、制約は様々です。
例えば、「前面道路の整備」や「埋蔵文化財」「緑化」、「雨水流出抑制」、「消防用水」、「ゴミ集積所」「近隣説明」「農業用水等の協議」「近隣配慮」の確保など様々です。
「雨水の流出抑制」は、千葉県でいえば、敷地内に降った雨水を敷地内で浸透させたりします。
山梨県では、敷地から排水路にスムーズに流れる様に降水量などを計算します。
消防用水は、道路に埋設されている消火栓から半径140m以内にあるか、ない場合は消防用水を設ける様になっています。
「開発指導要綱」は、「許可」ほど重くはありませんが、やっぱり色々書類審査や近隣説明などありますので、作業内容では「許可」と、さほど変わりません。
これらの許可基準を一つづつクリアしていきます。
当初の計画段階から、これらの許可基準を工事費にも計上しておかなければなりません。
行政や近隣との協議ですので、細部までの工事費を事前に考慮しておくことは、行政との折衝に十分な経験者でも、難しい作業です。
そうして考えますと、建物自体の総工事費は、外構工事(開発等許可基準)と比較しますと、スムーズに算出できます。
6、市街化調整区域の元工場は比較的、安価である。
1~4項目をご覧になってもお分かりの通り、千葉県内で工場用地を新たに確保する難しさがあります。
私の弟が経営している給排水衛生工事の会社が、新たな敷地確保がしたいと相談がありました。
千葉市内の市街化調整区域ですが、元プロパンガスの充填工場でした。
3,374.78㎡ 1018坪程度の土地でした。
市街化調整区域になる以前から建物が立っている場合、建築の計画ができます。
建物が建っていた事を証明する公的書類があれば、1.5倍の建築計画ができるというものでした。
工業団地と違って、市街化調整区域では、上下水道のインフラ整備は大半されていませんので、その点でいえば割高となります。
しかし、土地の坪単価が非常に割安な事が最大の魅力です。
また、市街化調整区域にある工場は比較的に前面道路の幅員もゆったり目で、渋滞がない事も魅力の一つです。
インフラが整備されている工業団地は用途地域が定まった所にあります。
それにしても、外構工事は必要であり、「許可等」で基準をクリアにする過程は変わりません。
工場作業内容が適合すれば、市街化調整区域は掘り出しものであると言えます。