住宅のライフサイクルコストを比較してみる【1回目】
2020/04/08
みなさま、こんにちは。
4月7日は戦艦大和が撃沈された日です。
大和は、巨砲主義の時代に生まれ、空母主義となっても、日本のシンボルとして生き続けた戦艦ですね。
大和の一生は、時代に取り残されたものだった様に思います。
ライフサイクルコストってご存知でしょうか。
購入者が購入して、廃棄するまでの全てのコストを言います。
人間でいえば、一生にどれくらい、生活費がかかったかの様な例えです。
設計者として、住宅の企画に携わりますが、最もお施主様が気になさるのが建設費です。
建設費は初期の段階ですので、いわゆるイニシャルコストです。
これを抑え込むことが前提となって、大半の打合せが進み、内容に満足されますと、建設が始まりです。
しかし、「本当にそれでよいのかと、ふと思う」ことがあります。
例えば、古民家の改修です。
他社では、新建材を多用して建設コストを抑え込みます。
本来、長い年月風雪に耐えた家ですから、どの古民家も風格があります。
当時の粋や、格式、営みを感じるのですが、お施主様はこの家を大事にしたいと云いつつ、コストの話ばかりします。
結局、どんな理由があるにせよ、コストが合わなければ、他社との価格競争に負けて、呼ばれなくなります。
古民家の場合、当時の建材はすべて本物でできていますから、撤去材も場合によっては、活用の方法があります。
しかし、この見積段階では、再利用の活用方法をお話ししても、気になるのが建設コストに尽きてしまい、価格を決定するだけの時間を消費します。
こんな事から、「日本には、イデオロギーがあるのか?」と思う事も、やっぱりあります。
外国と日本のライフサイクルコストを比較しますと、大分違いがあります。
イギリスでは140年、アメリカは100年、ドイツで80年です。
日本で言えば、30年足らずで解体です。
この解体の理由は、学生時代に教わった理由は、「設備や構造の老朽化」が主でした。
確かに、風呂の解体をすれば、腐朽菌で朽ちた土台を見ます。
真っ赤に錆びた白ガス管の給水管がボロボロになっているのもよく目にしますので、否定はできません。
私の経験では、問題は基礎です。
当時の建築では、コンクリートの強度や打ち込み方が粗悪であったり、鉄筋量が圧倒的に不足したりすることが、大半です。
この基礎と土台を連結方法に問題がある事もよくあることです。
しかし、これらの問題は、解決できない問題ではありません。
コストをかければ、この問題も解決しますので、取り壊しの決定的な要因にはなりません。
解体の最大の要因は、「建物に価値を見出さない」からであり、
究極は「家に愛情がない事」だと思っています。
また、日本人気質として、古い物は粗悪品であり、
よくない物だと思い込んでいる節もあります。
国税局の方針でも、減価償却を採用していますので、無理はありません。
イギリスでは、ゴーストが住まない家に価値がないと思われているそうです。
アンティークを尊ぶお国柄ですので、納得しますが。
いずれにせよ、古い物のとらえ方が国によって違うようです。
古都京都でも、多少イギリスと同様の価値が文化として溶け込んでいる様にも思えますので、同じ日本でも多少温度差があるのかも知れませんが。
今日はこの辺で。
次回もまた、ライフサイクルコストのお話をします。
ご拝読有難うございました。