建築士の講師3

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木になる噺し(ブログ)

一級建築士3 コンプレックス

2024/07/19

コンプレックス 

 

小学生4年頃だったと思う。

 父が厳しく、ほぼ毎日、理由も分からず、殴られていた。

ごはんを食べるのに、読書か宿題をするのが条件だったが、勉強が出来なかった。

机には向かうが、できないので、「ごはん抜き」は茶飯事だった。

 

殴られ続け、あらゆる事に自身は持てなかった。

中学生になると、暴力や飯ぬきはなくなったが、

自己肯定感はほとんどなく、自尊心など皆無だった。

その為、どの理数も文系も、体育でも成績はよくなく、パッとしない劣等生だった。

 

社会人になって、師匠のいる設計事務所で勤務をしていた時、

「千葉君は建築士を受験しないのか?」と尋ねられた。

「受けても合格しませんよ」と答えた。

 

「ワハハ」「そりゃそうだ、受けなきゃ合格しない」と言われた。

なんの勉強もしてなかったので、一度目の受験は不合格であった。

 

「悪いけど、建築士協会にいって来てくれるか?」と聞かれ、

変なカタログを貰ってくるだけの用事であったので、渋々行くこととした。

建築士協会で用事を済ませ、帰る時に合格者の建築士名と生年月日が貼られていた。

 

個人保護法等のない時代、堂々と名と生年月日が建築士会の壁に表示され、合格者が閲覧できた。

 見ると、幾人も同学年生が合格していた。

いままで、何をしていたのかと急に、情けなくなった。

 

「千葉君は、自身がないんじゃないのか?」

と師匠から訊かれた。

「・・・」応えられなかった。

 

「自身って、勘違いから生まれるんだよ」

「?」

「できないと思っているのも勘違い」「できると思うのも勘違い」

「どうせ勘違いならできるって思ったっていいんじゃない?」

「できると思う勘違いが積み重なれば、自身になるんじゃないの?」

 

22歳の夏であった。

合格、不合格以前に、バカだと思い込んでいる自分に本当に嫌気がさしていた。

空っぽの自己肯定感を、何でもいいから実のあるもので満たしてみたかった。

勉強でも、受験でも合格でもなんでもいいから、しがみつきたかった。

 

自分も父親になったとき、父に

「何で殴ってたの?」と聞いたら

「長男だから」と答えた。

 

 

代償は現在でも、虐待のかけらたちと戦っている。

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