木材「檜」について【その2】
2020/05/02
皆様、こんにちは。
職人バッカの千葉でございます。
今日も、檜の話です。
マニアックですみませんが、暇つぶしになれば幸いです。
前回、伊勢神宮について触れましたが、伊勢には式年遷宮があります。
「宮域林」と呼ばれる神宮の森は、内宮のほとりを流れる五十鈴川の上流に位置し、
約5,500ヘクタールあり、一般的には「神宮林」と呼ばれています。
この森は遷宮の際、檜を調達する森なのですが、式年遷宮の度に元々は自然林であった「宮域林」から供給していました。
この為、鎌倉時代後期から檜の良材が採れなくなり、近隣の山や美濃の山から調達しました。
更には江戸時代中期からは木曽の森林から供給されるようになりました。
また、明治天皇の崩御で、明治神宮の計画が模索され、東京にも神宮を建設する計画がされました。
明治神宮は、もともと荒野でした。
神宮の予定地に人工的な森を造る事になり、1913年に創建案が決定し、
京大学の林学者 本多静六氏など専門家が考えました。
主木としてアカマツやクロマツ、あるいは全国から届けられた10 万本の「献木」を選んで植えました。
マツの間には成長の早いヒノキやサワラ、スギ、モミなどの針葉樹を植え、
さらにその下に将来の主木となる武蔵の国に自生しているカシやシイ、クスノキなどの常緑広葉樹を植えました。
こうして、森を形成するのに150年後を見越した計画が見事な森を今の明治神宮に見られます。
日本には白木文化があるようです。中国では、赤い木が好まれます。
中国の各家庭に訪問しても、フローリングに白い木を用いている家庭が異常に少ないのに驚いた事があります。
この点では、日本は白木を好み、好んだ事から、白木を上等とした文化が育まれてきたのだと思います。
意外と日本の材料には赤木が少なかったのも、理由の一つかもしれません。
赤木は、ハードウッドによく見られます。
ジャラ材、ケンパス、ウリンなどで、超硬質材でタフな木々です。
滅茶苦茶硬い材料ですので、木材に直に触れる日本の材料とは、肌触りから異質な感覚になります。
日本の場合、屋内は裸足であり、「裸足文化」が硬い木を拒絶したのかもしれません。
日本の木々達は、だれもが靭性に富み、しなやかで、割れにくく、貧弱そうにみえて意外と丈夫という日本文化の特性を内包しています。
檜は、日本、台湾にのみ分布します。
樹皮は、岩肌状であり、樹高は50m直径2.5mにもなるものもあります。
台湾には、樹齢2000年ものも生息している様です。木曽では樹齢450年のものが最高齢だそうです。
米檜(ベイヒ)は、ヒノキ科ヒノキ属ですので、日本の檜と見間違うほど、似ています。
変色菌が早い段階で付着して青色に変色しやすい欠点がありますが、他は檜とかわりません。
檜を床柱で使用するものでいえば、
「出節や磨き丸太、さび丸太、面皮柱」
などがよく使われます。
檜といえば、さび丸太は錆びた様な模様が特徴的で、最も日本らしいと思う材料の一つです。
千利休の「わびさび」を彷彿させる自然と日本人が作り出した材料でしょう。
檜は、浴槽にもよく用いられます。
これらの材料は、古代檜と呼ばれ、年輪の緻密なものを用います。
意外な事に舟大工の技術が用いられる様です。
釘も和釘を用いて、接着面は、「そくい」と呼ばれるご飯粒を潰したもので接着します。
ご飯は乾燥時、カピカピになりますが、水に濡れているとベトベトになる性質を巧みに利用したのでしょう。
木の加工も、水に濡れた状態と乾いた状態を計算して加工する様です。
檜風呂は、「ヒノキチオール」の香りが漂い、リラックスさせてくれます。
檜は、「肌のなめらさ」と「ほのかな香り」が、やさしく印象的で、気品と風格があります。
それでいて、タフな材料です。
この材料は、刺身や寿司といった和食文化に共通点があります。
和食は手間をかけているのに、手間を感じさせない演出があり、背景には、清潔感があります。
他国の「煮込む」「揚げる」「炒める」「スパイスで味付ける」といった手間をかけ抜く雑菌処理方法は「足し算の料理方法」です。
対して、「檜」も「和食」も
「引き算の定理」であり、
過度な宝飾がなく、派手な色合いもなく、
「素材勝負の潔さ」が漂うのです。
どの時代でも、日本の潔さは、この事でも永遠と尊ばれてきた証だと思うのです。
今日はこの辺で。
ご拝読有難うございました。